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腰痛、肩こりから線維筋痛症へ


 線維筋痛症は独立した疾患ではありません。通常、肩こりや腰痛からグレーゾーンを経由して線維筋痛症が発生します。身体の5か所に痛みが3か月以上持続し、18か所の圧痛点のうち11か所以上に圧痛があれば、他にいかなる疾患があっても自動的に線維筋痛症が存在します。身体の5か所に痛みが3か月以上持続するが、圧痛点の数が10以下の場合はchronic widespread pain(慢性広範痛症)といいます。これは狭義の慢性広範痛症ですが、広義の慢性広範痛症は線維筋痛症を含みます。「身体の5か所に痛みが3か月以上持続する」という基準を満たさないが肩こりのみや腰痛のみより痛みの範囲が広い状態を通常chronic regional pain(慢性局所痛症)と言います。論文により線維筋痛症が慢性広範痛症に含まれていたり、含まれていなかったりするため、広義の慢性広範痛症と狭義の慢性広範痛症と表現しました。この基準は1990年の線維筋痛症の分類基準に記載されているchronic widespread painの基準です。これ以外の慢性広範痛症の基準も存在しますが、この基準の使用頻度が圧倒的に多いのです。他の疾患で症状が説明できる場合には通常、慢性広範痛症や慢性局所痛症とは診断されません。慢性広範痛症と慢性局所痛症の境界は明瞭ですが、慢性局所痛症と肩こりのみ、腰痛のみとの境界は不明瞭です。通常、肩こりや腰痛から慢性局所痛症、そして慢性広範痛症、最後に線維筋痛症になるので当然といえば当然です。
 線維筋痛症の有病率は先進国では約2%と報告されています。線維筋痛症を含む慢性広範痛症の有病率は約10%です。慢性局所痛症の有病率は慢性広範痛症の有病率の1-2倍です。慢性局所痛症から慢性広範痛症、線維筋痛症に進展するに従い症状が強くなります。線維筋痛症を治療している世界の医療機関では通常慢性広範痛症に対しては線維筋痛症と同じ治療が行われています。慢性局所痛症に対しても恐らく線維筋痛症と同じ治療が行われていると考えています。慢性局所痛症や慢性広範痛症に線維筋痛症の治療を行えば、有意差はありませんが線維筋痛症以上の治療性成績を得る事が出来ます。つまり、人口の少なくとも2割は線維筋痛症あるいはそのグレーゾーンであり、その人々に線維筋痛症の治療が有効です。もちろんグレーゾーンの人々全員が医療を必要としているわけではありません。また慢性局所痛症や慢性広範痛症の有病率の中には関節リウマチなどの疾患が含まれている可能性がありますが、人口の少なくとも2割という膨大な有病率の前では誤差範囲と考えています。
 線維筋痛症、慢性広範痛症、慢性局所痛症に同じ治療を行うのであれば、通常の臨床においてはそれらを区別する意義はありません。しかし、学会で発表する場合や論文を書く場合にその区別は必要です。圧痛点の数が0の患者さんを線維筋痛症と見なしたのでは治療方法の優劣の比較が出来ません。しかし、日本では圧痛点が10なので線維筋痛症ではない、そのため治療方法がないと宣告される場合が少なくありません。線維筋痛症の治療を行っている医療機関でもこのような事が起きています。線維筋痛症でなければ、線維筋痛症の治療を受けないという患者さんもいます。

by fibromyalgia11 | 2011-02-26 20:18 | FMの雑感
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世界標準の線維筋痛症を専門家が説明します


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