抗欝薬、抗痙攣薬、抗不安薬、睡眠薬内服中は自動車運転禁止


戸田克広:眠気を引き起こす薬物の添付文書における問題点—本剤投与中の患者には、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように注意することー 臨床精神医学37(6)831, 2008
 
戸田克広:向精神薬の添付文書における自動車の運転等についての記載は修正すべき 精神科治療学 24 (12) 1534-1535, 2009

 日本の法制度や社会制度の問題点の1つは法律など文章化されていることと実態が解離している頻度が多いことです。
 私は慢性痛を専門としています。抗うつ薬・抗けいれん薬を慢性痛に対する痛み止めとして使用しています。パニック障害が合併する場合には抗不安薬を一時的に使用しています。もちろん抗うつ薬はうつ病の薬ですのでうつ病患者にも使用されています。添付文書と言って薬を使用する際の注意書きがあり、医師はそれを読んで薬を処方することになっています。その添付文書に問題があります。ほとんどすべて(私が知る限りすべて)の抗うつ薬・抗けいれん薬・抗不安薬は副作用で眠気を起こします。そのためほとんどの場合重要な基本的注意として「眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。」又は「眠気,注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので,本剤投与中の患者には,自動車の運転など危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。」と記載されています。これは自動車を運転することは禁止という意味と解釈せざるを得ません。しかし、非常にわかりにくい表現です。ほとんどすべての抗うつ薬・抗けいれん薬・抗不安薬での記載です。これらの薬剤以外でも眠気の副作用がある場合には同様の記載です。パキシル、ジェイゾロフト、レクサプロという抗うつ薬の添付文書には「眠気、めまい等があらわれることがあるので、自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際には十分注意させること。」と記載されています。自動車を運転することは注意すれば可能と言う意味です。パーキンソン病の薬であるビ・シフロールの場合には添付文書の初めに警告として「前兆のない突発的睡眠及び傾眠等が見られることがあるので、本剤服用中には、自動車の運転、機械の操作、高所作業等危険を伴う作業に従事させないよう注意すること。[「重要な基本的注意」、「副作用」の項参照]」と赤字で記載されています。自動車を運転してはならないのであればビ・シフロールの様な記載にすべきであり、自動車を運転してもよいのであればパキシル、ジェイゾロフト、レクサプロの様な記載にすべきです。製薬会社は責任を問われたくない、しかし売り上げを減らさないために「眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。」などという表現にしたのであると推測しています。これは詐欺的行為と思います。私は実名で医学論文中にこの問題を何度も取り上げています。製薬会社にこの問題を指摘したのですが、@@@@@@株式会社など「添付文書を直す権限を持っている機関と交渉する意志がない。」趣旨の返事(字面は丁寧ですが)が返って来ることがしばしばあります。その他多くの製薬会社にもこの問題を指摘したのですが「添付文書を直す機関にこの問題を指摘したが門前払いであった。その機関の名称を答えることは出来ない。」という返事があるのみです。厚生労働省にもこの問題をメールで指摘したのですが黙殺です。添付文書は医薬品医療機器情報提供ホームページからダウンロードできます。http://www.info.pmda.go.jp/psearch/html/menu_tenpu_base.html
 添付文書上はてんかん患者は抗てんかん薬を飲んでいる間は自動車を運転できないことになります。もちろん、てんかん患者は抗てんかん薬を飲んでいない場合には運転が禁止されていると思います。この矛盾を解消すべきです。
 抗うつ薬・抗けいれん薬・抗不安薬以外にも添付文書上自動車の運転ができない薬はいくつかあります。その人たちが自動車の運転が出来ないと日本の経済は破綻します。どのように少なく見積もっても成人の1割は自動車を運転できなくなります。自動車が売れなくなります。通勤、買い物や自動車を運転することが必須の仕事ができなくなります。生産性が悪くなるのみならず、大量の失業者がでるため国家がその人たちの生活費を出す必要があります。
 眠気を起こす薬を自動車を運転する者に処方して事故が起これば、医師が責任を追及されるでしょう。自動車を運転する者に眠気を起こす薬を処方できないとなると、自動車を運転する者はまっとうな医療を受けることができなくなります。医師は患者さんのことを考え、危ない橋を渡っているのです。うつ薬・抗けいれん薬・抗不安薬を飲みながら自動車を運転して眠ってしまい、悲惨な事故が起きる可能性が高いと思います。
 現場の医師や薬剤師は矛盾した制度に苦しんでいます。抗うつ薬・抗けいれん薬・抗不安薬を飲みながら自動車を運転する患者を黙認せざるを得ません。私が知る限り実名でこの矛盾を指摘したのは私のみです。
 現実的な対処が必要です。抗うつ薬・抗けいれん薬・抗不安薬の添付文書を「眠気、めまい等があらわれることがあるので、自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際には十分注意させること。」と修正すべきです。
 担当官庁、担当大臣(自民党と民主党)、有名新聞、有名ニュース番組、日本医師会、日本精神神経学会にこの問題点を指摘しましたが現時点では無反応です。

 更に言えば睡眠薬を内服中も自動車の運転は禁止です。就寝前に睡眠薬を飲めば日中は自動車を運転してもよいと誤解している人がいます。「本剤の影響が翌朝以後に及び、眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。 」と記載されています。

 添付文書の問題を実名で医学論文、医学書に記載している医師は私が知る限り日本では私のみです。日本の医師の皆様、現状がおかしいとお考えでしたら大騒ぎをしてください。私のみが大騒ぎしている現状はおかしいと思います。黙っていれば、医師は現状でよいと考えていると製薬業界からみなされてしまいます。

2012年12月に電子書籍を出版しました。 
抗不安薬による常用量依存―恐ろしすぎる副作用と医師の無関心、精神安定剤の罠、日本医学の闇― 第1版
http://p.booklog.jp/book/62140
 その書籍の中にさらに詳しく書いています。有料の本ですが、無料部分に記載しています。
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by fibromyalgia11 | 2011-07-17 13:47 | 抗うつ薬
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世界標準の線維筋痛症を専門家が説明します


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