抗精神病薬・抗うつ薬・抗けいれん薬・抗不安薬内服中は自動車の運転禁止


 日本の法制度や社会制度の問題点の1つは法律など文章化されていることと実態が解離している頻度が多いことです。
 私は慢性痛を専門としています。抗精神病薬・抗うつ薬・抗けいれん薬・抗不安薬を慢性痛に対する痛み止めとして使用しています。もちろん抗うつ薬はうつ病の薬ですのでうつ病患者にも使用されています。添付文書と言って薬を使用する際の注意書きがあり、医師はそれを読んで薬を処方することになっています。その添付文書に問題があります。ほとんどすべて(私が知る限りすべて)の抗精神病薬・抗うつ薬・抗けいれん薬・抗不安薬は副作用で眠気を起こします。そのためほとんどの場合重要な基本的注意として「眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。」又は「眠気,注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので,本剤投与中の患者には,自動車の運転など危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。」と記載されています。これは自動車を運転することは禁止という意味と解釈せざるを得ません。しかし、非常にわかりにくい表現です。トリプタノール・ノリトレン・デパス・テグレトール、リーマス等々、ほとんどすべての抗精神病薬・抗うつ薬・抗けいれん薬・抗不安薬での記載です。これらの薬剤以外でも眠気の副作用がある場合には同様の記載です。ものすごい数の薬に関連しています。パキシルとジェイゾロフトと言う薬の添付文書には「眠気、めまい等があらわれることがあるので、自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際には十分注意させること。」と記載されています。自動車を運転することは注意すれば可能と言う意味です。パーキンソン病の薬であるビ・シフロールの場合には添付文書の初めに警告として「前兆のない突発的睡眠及び傾眠等が見られることがあるので、本剤服用中には、自動車の運転、機械の操作、高所作業等危険を伴う作業に従事させないよう注意すること。[「重要な基本的注意」、「副作用」の項参照]」と赤字で記載されています。自動車を運転してはならないのであればビ・シフロールの様な記載にすべきであり、自動車を運転してもよいのであればパキシルやジェイゾロフトの様な記載にすべきです。製薬会社は責任を問われたくない、しかし売り上げを減らさないために「眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。」などという表現にしたのであると推測しています。これは詐欺的行為と思います。私は実名で医学論文中にこの問題を何度も取り上げています。製薬会社にこの問題を指摘したのですが、@@##株式会社など「添付文書を直す権限を持っている機関と交渉する意志がない。」趣旨の返事(字面は丁寧ですが)が返って来ることがしばしばあります。「おかしな状態を是正するため、権限を持っている機関と交渉する。」という意志のある製薬会社もあります。ただし2年経過しても何も変化がありません。添付文書を修正することのできる機関はどこか訪ねても教えてもらえません。業界全体で修正する意思はないようです。@@@@省にもこの問題をメールで指摘したのですが黙殺です。添付文書は医薬品医療機器情報提供ホームページからダウンロードできます。http://www.info.pmda.go.jp/psearch/html/menu_tenpu_base.html
 眠気を起こす薬を自動車を運転する者に処方して事故が起これば、医師が責任を追及されるでしょう。自動車を運転する者に眠気を起こす薬を処方できないとなると、自動車を運転する者はまっとうな医療を受けることができなくなります。医師は患者さんのことを考え、危ない橋を渡っているのです。すべての国民が加害者にも被害者にもなり得ます。この問題を放置したままでは、医師が線維筋痛症の治療をしたがらない原因の一つになります。線維筋痛症に有効な薬のなかでリリカ、サインバルタ、トレドミン、ガバペン、トリプタノール、ノリトレンなどが該当します。
 さらに言えば、てんかんの患者さんが飲んでいる抗けいれん薬を内服中は、自動車を運転してはいけないことに添付文書上はなっています。つまり添付文書上はてんかん患者さんは日本では自動車を運転できないことになっています。私に怒りを向けないで下さい、添付文書に書いてあるのです。てんかん患者さんが薬を飲まず、自動車を運転し、てんかんが発生し死亡事故が起きています。それは犯罪であると思います。しかし、弁護士が「抗けいれん薬を飲んでいると自動車を運転できないことになっている。そのため、自動車を運転するためには抗けいれん薬を中止せざるを得なかった。」と弁護活動をしたらどうなるのか私にはわかりません。
 添付文書上、内服中は自動車を運転してはならない薬はその他にもたくさんあります。どのように少なく見積もっても成人人口の1割はそれらの薬を内服しています、大都会は別として地方では自動車を運転できないことは社会的な死を意味します。通勤そのものが不可能になる人は少なくありません。買い物や通院も不可能になる人も少なくありません。バス、タクシー、配送、営業職など自動車を運転することが勤務そのものあるいは勤務に必須な職業も少なくありません。失業者が多発します。自動車も売れなくなります。政府は添付文書のために失業した人の生活を面倒見なければなりません。つまり、添付文書に記載されたことが実行されると日本の社会は崩壊します。添付文書恐慌です。実に滑稽な恐慌です。
 そのため、医師や薬剤師はこの問題を黙認あるいは知らない振りをせざるを得ません。実におかしなことです。

ビ・シフロール
警告
前兆のない突発的睡眠及び傾眠等が見られることがあるので、本剤服用中には、自動車の運転、機械の操作、高所作業等危険を伴う作業に従事させないよう注意すること。[「重要な基本的注意」、「副作用」の項参照]
重要な基本的注意
パキシル
眠気、めまい等があらわれることがあるので、自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際には十分注意させること。これらの症状は治療開始早期に多くみられている。
ジェイゾロフト
眠気、めまい等があらわれることがあるので、自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際には十分注意させること。
重要な基本的注意
トリプタノール
眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。
ノリトレン
眠気,注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので,本剤投与中の患者には,自動車の運転など危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること.

 有名新聞、民間放送の有名ニュース番組、監督官庁、担当大臣(自民党、民主党)、日本医師会などに自動車の運転問題を提起しましたが反応はありません。実名でこの問題を提起している医師は私が知る限り私のみです。


2013年5月29日厚生労働省から自動車運転禁止の徹底の指示が出ました。
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T130605I0040.pdf#search='%E8%87%AA%E5%8B%95%E8%BB%8A%E9%81%8B%E8%BB%A2%E7%AD%89+%E7%A6%81%E6%AD%A2%E7%AD%89'


自動車の運転問題を提起した論文や本です。
戸田克広ら:CRPS(RSD)の治療—薬物療法と交代浴の実際—Monthly Book Orthopaedics 18(6):23-30, 2005 お詫びと訂正18(7):78,2005
  
戸田克広:眠気を引き起こす薬物の添付文書における問題点—本剤投与中の患者には、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように注意することー臨床精神医学37(6)831, 2008

戸田克広:向精神薬の添付文書における自動車の運転等についての記載は修正すべき 精神科治療学 24 (12) 1534-1535, 2009

戸田克広:線維筋痛症がわかる本. 東京、主婦の友社、2010

戸田克広:エビデンスに基づく薬物治療(海外の事例を含む). 線維筋痛症診療ガイドライン2011 日本線維筋痛症学会編、東京、日本医事新報 93- 105, 2011
 

2012年12月に電子書籍を出版しました。 
抗不安薬による常用量依存―恐ろしすぎる副作用と医師の無関心、精神安定剤の罠、日本医学の闇― 第1版
http://p.booklog.jp/book/62140
 その書籍の中にさらに詳しく書いています。有料の本ですが、無料部分に記載しています。
 
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by fibromyalgia11 | 2011-09-19 02:24 | FMの薬物治療総論
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世界標準の線維筋痛症を専門家が説明します


by fibromyalgia11
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