自殺する患者さん

 線維筋痛症患者さんは時々自殺します。慢性疲労症候群を合併していると自殺する可能性が高くなると私は推測していますがデータはありません。自殺念慮(自殺したいと考えること)、自殺企図(自殺行動を起こすこと)、リストカットは日常茶飯事です。リストカットは文字通りの手首のみならず前腕、上腕、大腿部にも起こります。リストカットは自殺関連行動に含まれますが、通常自殺する意思はなく心を落ち着けるために儀式のようです。ただし、その儀式の最中誤って死んでしまう人はいるかもしれません。その場合、結果的には自殺になります。
 線維筋痛症患者さんの自殺の原因には大きく分けて二つあります。一つは痛みの苦しさや将来の不安のために自分の意思で自殺する場合と、薬の副作用で自殺する場合です。問題は後者です。SSRIという抗うつ薬の副作用で自殺が起こることがあります。SSRIは自殺のみならず衝動的な行動を引き起こすことがあります。衝動的な行動とは殺人と自殺です。アメリカのコロンバイン高校で大量殺人を起こした犯人の少なくとも1人はSSRIを飲んでいたことが報告されています。日本でもSSRIを飲んでいる人が殺人事件を起こしているようです。明確な証拠がないため「ようです。」という表現にしました。
 様々な報告を総合すると、SSRIは全体としては自殺を減らすあるいは少なくとも自殺を増やさないと考えています。しかし、ごく一部の患者では自殺や殺人を引き起こします。私自身の経験であるためそう断言します。最近では子供へのSSRIの投与は専門家(ほとんどの場合精神科医を意味します)に限るという規則になりました。しかし、SSRIは成人にも殺人や自殺を引き起こします。45歳男性でそれが起こりました。幸いにも強烈な殺人願望と強烈な自殺願望が出ましたが実行されませんでした(戸田克広:三環系抗うつ薬により弱い自殺念慮が選択的セロトニン再取り込み阻害薬により強い自殺念慮と他殺念慮が生じた成人慢性広範痛症の1例 最新精神医学 16: 205-208, 2011)。自動車に乗っている時には自動車から飛び降りたくなりました。その人がマンションの高層階に住んでいれば間違いなく自殺したであろうとのことでした。SSRIによる殺人や自殺の特徴は以下の通りです。1:SSRIを飲み始めた直後あるいは増量した直後に起こりやすい。2:攻撃的な自殺になりやすい。準備が必要な首吊りや服毒自殺ではなく、準備があまりいらない高いところからの飛び降りなどを選択する。そのため、SSRIを飲んでいる線維筋痛症患者さんが飛び降り自殺をした場合にはSSRIによる副作用としての自殺の可能性を考えた方がよいと思います。
SSRIによる自殺を防ぐ方法はありません。私は45歳の男性に1錠のSSRIを処方しましたが2,3日で殺人願望、自殺念慮が生じました。SSRIを飲む限りこの副作用を回避することはできません。誰に起こるのかもわかりません。私が全員に「薬を飲むと死亡する可能性がごくわずかに増える。」と説明する理由の一つがSSRIによる自殺です。ただし、「殺人を犯すかもしれない。」とは説明していません。
 この文章を読んでもSSRIを中止しないで下さい。自分の判断でそれを中止した場合の損害を私は補償しません。必ず医師に相談してください。
 話を元に戻します。線維筋痛症患者さんでは自殺が時々起こります。自殺念慮が出た場合には精神科に紹介しています。ほとんどの精神科医は線維筋痛症を認めていません。彼らにとっては身体表現性障害に訳のわからない診断をつけて治療に失敗したと映るようです。
 幸いにも現時点では私が治療している最中に自殺して死亡した患者さんは私が知る限り1人もいません。それは私の腕がよいのではなく、患者数が多くはないことと、運がよいだけです。私が2,3回診察を行い、いつの間にか受診されなくなり、他の医療機関に移った方が自殺したという風の便り(詳細は話せません)は聞いたことがあります。
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by fibromyalgia11 | 2011-10-30 09:00 | FMの雑感
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世界標準の線維筋痛症を専門家が説明します


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