治験について

 私はアメリカのNIH(国立衛生研究所)で治験業務に従事していました。NIHに限らずアメリカでは様々な治験が行われています。日本では治験はあまり行われていませんでしたが、最近は新聞などで治験を目にすることが多くなりました。
 アメリカの治験について述べます。治験とは薬を発売するまでに人体を用いて効果や安全性を調べる研究です。治験には様々な段階がありますが、それに関してはここでは述べません。アメリカは基本的にはキリスト教国です。奉仕や寄付という習慣があります。奉仕や寄付は自分の金銭的利益のためではなく、他人の金銭的利益のために行う行為です。ここで言う利益とは金銭的な利益のみならず精神的利益(気持ちがよくなる)や肉体的利益(痛みがなくなる)も含みます。
 アメリカでは様々な団体に寄付を行うことが多いのです。患者団体への寄付も日本に比べると圧倒的に多いのです。しかし、一方では寄付をすると税控除があります。他人に金銭的な利益をもたらすと自分自身にも少しですが利益をもたらす制度になっています。
 奉仕や寄付の1つとして治験に参加する人もいます。しかし、一方で治験に参加すると自分自身に利益がもたらされる仕組みになっています。治験に参加すると5000円程度の謝礼がもらえる場合があります。アメリカでは国民皆保険ではないため、治験に参加することは金銭的利益をもたらす場合が多いのです。アメリカでは歯科治療は多くの場合自費です。例えば親知らず(第三大臼歯)の抜歯には10万円弱の費用がかかります。そこで「親知らずを抜けば医療費は無料です。5000円の謝礼を出します。」という治験が成立します。親知らずを抜くと痛みが起こるため、様々な鎮痛薬の治験が行われています。薬(偽薬又は本物の薬)を飲んでもいたい場合には決められた鎮痛薬(本物の鎮痛薬)を飲むことは許されます。患者さんは自分自身の金銭的利益になり、研究側は鎮痛薬の鎮痛効果を調べることができます。
 アメリカでは使用できない薬の治験もあります。特に、クロスオーバーといって治験を前半と後半に分けてどちらかが偽薬、従来飲んでいる薬を注視する必要はない事もあります(ただし、治験中は従来の薬を中止しても、増量や追加してはいけない。それをすると治験から脱落)。参加者個人の利益が得られる仕組みになっています。
 日本でも治験が行われています。治験に参加する場合には、誰の利益のために参加するのかを明確にしてください。治験の中には参加者に不利益になるが、同病の人の利益になる治験があります。参加者の不利益になるが他人(同病の人)の利益になる治験に、参加者の利益目的で参加することが起きています。これではトラブルになります。治験に参加する場合には何の薬の治験なのか、偽薬を飲む確率は何%なのかを尋ねた方がよいと思います。ただし、それを教えてくれるかどうかはわかりません。
 日本人は誰のための利益になるかをあまり考えないと思います。その象徴が交通安全協会への入会です。多くの人は何となく交通安全協会に入会しています。私がそれに入会しているかどうかはここでは述べませんが、私の友人、知人の中で交通安全協会への入会は誰のためなのかを明確に考えた人はそこには入会していません。
 個々の治験に関しては言及しません。一部の治験は参加者に不利益をもたらすが他人(同病の人)に大きな利益をもたらします。その治験に参加する場合にはそれを知った上で参加すべきです。ところが、参加者に不利益をもたらすが他人(同病の人)に大きな利益をもたらす治験が、参加者に利益をもたらすかのように宣伝される場合があります。それは望ましくないと思います。
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by fibromyalgia11 | 2013-08-04 10:15 | その他
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世界標準の線維筋痛症を専門家が説明します


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