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線維筋痛症ガイドライン2017:線維筋痛症の患者数の章は怪しい


CQ2-1患者数

 この章は私が担当した。ただし、私だけが担当したかどうかは不明である。私が日本線維筋痛症学会に送った内容は以下の通り。

 わが国のFMの患者数を調べることは実質的に不可能であるため、わが国におけるFMの有病率を調べた。

822日にPubMedで全フィールドでFibromyalgiaAND prevalence AND Japanを調べると16の論文が見つかった。その中でToda[1]Nakamura[2]の論文が見つかった。 

 811日医学中央雑誌で「線維筋痛症 and 有病率」を調べると43の論文が見つかった。 

松本らは大規模な疫学調査をしたようである。都市部でのFMの有病率は2.2%、地方部での有病率は1.2%で、全体として1.7%と報告している。本来であれば、その研究が最も信頼性が高いはずであるが、調査対象人数などの詳細が不明であり、有病率のみが公表されている。調査対象人数などの詳細が不明な論文を引用している状態である。調査対象人数の記載のない有病率の信頼性は低いと言わざるを得ない。また、2.2%1.2%の平均を日本の有病率と見なしてよいのかという問題もある。そのため、現時点では科学的信頼性は低いと言わざるを得ない。

Todaは日本の複数の医療機関の敷地内で就労する者を1990年基準を用いて調べ、女性343人中7人(2.04%)、男性196人中1人(0.51%)がFMであったと報告している[1]。この研究は地域住民ではなく就労者を対象にした有病率調査である。

Nakamuraらはインターネットを用いた疫学調査を行い、日本全国の都道府県の20歳以上の20,407人のうち425 (2.1%)2010年基準(日本語版)を満たしたと報告している[2]。本研究はNRSnumerical rating scale)が4以上の条件を入れたり、医師が患者に症状を確認するのではなく患者が症状を選択するなど、2010年基準に従っていない。2010年基準では多数の症状を医師が患者にインタビューする必要がある。また、FM以外の疾患が2010年基準を満たす場合にはFMとは診断できないが、インターネットによる調査であるため、その確認を行っていない。しかし、患者数が多く、詳細なデータがそろっているため日本におけるFMの有病率に関しては最も信頼性が高い報告である。

 Toda2005年までに報告された世界の地域住民におけるFMの有病率の一覧を報告しており[1]、それによると2%程度と推定される。

 これらのことを総合すると日本人におけるFMの有病率は2%前後と推定される。日本の人口を約12700万人と見なすと、FM患者の総数は約250万人と推定される。

引用文献

1. Toda K: The prevalence of fibromyalgiain Japanese workers. Scand J Rheumatol. 36(2). 140-144, 2007.

2. Nakamura I, NishiokaK, Usui C, Osada K, Ichibayashi H, Ishida M, Turk DC, Matsumoto Y: AnEpidemiological Internet Survey of Fibromyalgia and Chronic Pain in Japan.Arthritis Care Res (Hoboken). 66(7). 1093-1101, 2014.


厚生労働省研究班が行った有病率の研究では対象者の数が記載されていないことが問題であった。私は多くの論文を調べたが、対象者の数は記載されていなかった。このガイドラインで初めて8000人と記載されている。私が知らない論文に8000人と記載されている可能性は否定しない。そのため、8000人の根拠となる引用論文が必要なのである。このガイドラインでは個々の記載のどの部分の根拠がどの引用論文なのかが不明瞭である。もし、過去の論文に8000人の記載がなく、このガイドラインで初めて8000人という人数を入れることはガイドラインとしては許されないことである。厚生労働省研究班が行った有病率の研究には対象者の数が記載されていないためエビデンスレベルが低いと私が批判したため、その批判をかわすために8000人と記載したのではないことを祈るのみである。再度言うが、過去の論文で8000人という記載がないにもかかわらずこのガイドラインで初めて8000人という人数を入れたのであれば、このガイドラインのいい加減さを象徴してしまう。さらに言えばちょうど8000人なのであろうか。不自然である。また、8000人における男女比が記載されていない。

 Nakamuraらの研究では、診断基準に問題がある点を私は指摘したが、不都合なことを無視している。線維筋痛症学会の中心人物が共著者にいるため不都合なことは隠すのであろうか。

 厚生労働省研究の研究での有病率とNakamuraらの研究の有病率の差を対象者の差であると決めつけているが、診断基準の差かもしれない。

 私の論文では女性343人中7人(2.04%)、男性196人中1人(0.51%)がFMであったと報告している。これを(男女平均で)1.5%にしたことは暴挙である。どのような計算をすると1.5%になるのであろうか。




by fibromyalgia11 | 2017-03-03 07:18 | FMの雑感
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世界標準の線維筋痛症を専門家が説明します


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