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線維筋痛症への麻薬使用

 非癌性疼痛である線維筋痛症に麻薬を使用してもよいのかという問題がある。ブプレノルフィン(レペタン、ノルスパンテープ)やペンタゾシン(ペンタジン、ソセゴン)は麻薬指定されていないが、依存が起こりやすいので線維筋痛症に使用することは不適切である。
 弱オピオドのトラマドールは麻薬指定されていない。線維筋痛症に有効という二重盲検法があるが日本では非癌性疼痛には使用できない。
 弱オピオドのトラムセットはトラマドールとアセトアミノフェンの合剤であり、麻薬指定されていない。非癌性疼痛に使用可能である。という二重盲検法がある。私は時々使用しているが、優先的には使用していない。
 弱オピオイドの1%コデインは麻薬指定されていない。弱オピオイドの10%コデインは麻薬指定されている。共に非癌性疼痛に使用可能である。コデインは体内でモルヒネに変換され鎮痛効果を発揮する。コデインを使用するほどの痛みであれば最初からモルヒネを使用すればよいと私は考えており全く使用していない。
 強オピオイドのモルヒネの錠剤、散剤、注射液は非癌性疼痛に使用可能である。錠剤と散剤は経口投与であり注射液は皮下注あるいは静注して使用する。持続的に皮下注する場合もあるがそのためには器具やそれらに関する知識が必要である。私は錠剤と散剤のみを使用している。
 強オピオイドのデュロテップMTパッチは非癌性疼痛に使用可能である。他のオピオドが無効な場合に使用することになっている。他のオピオイドとはモルヒネを意味すると私は考えているが、コデインやトラムセット使用後モルヒネを使用せずデュロテップMTパッチを使用する医師もいる。

 線維筋痛症にはオピオイドは極力使用すべきではない。しかし必要な場合には躊躇せず使用すべきである。矛盾するように思われるかもしれないが私はそのように実行している。
 痛みのない患者にオピオイドを使用すると依存が起きるが、痛みがある患者に使用する限りオピオイドは依存を引き起こさないと推測されている。しかし、絶対に依存が起きないという保証はないため極力使用すべきではない。しかし、線維筋痛症の治療をするとオピオイドを使用せざるを得ない場合がある。それは二つの場合である。
1:受診当初から激烈な痛みに苦しんでいる。
2:適切な治療を2年以上行っても痛みが軽減しない場合。適切な治療とは少なくとも私が使用しているスタメンをすべて使用する必要がある。
 文字で書けば簡単であるが、使用開始のタイミングは非常に困難である。

 線維筋痛症には絶対に強オピオイドを使用してはならないという医師がいる。それでは自殺する危険性があると私は考えている。非癌性疼痛には絶対に強オピオイドを使用してはならないという医師と話をしたことがある。「それでは通常の薬では抑えきれない激しい痛みはどうやって治療するのですか。」と尋ねると急に言葉があいまいになった。その医師の意見を総合すると我慢させるようであった。受診しなくなる患者もいるようである。それは無責任と私は考えている。

 問題点の1つは依存の診断基準である。例えばノイロトロピンで痛みが軽減した患者がノイロトロピンを中止すると痛みが悪化するためノイロトロピンを再開せざるを得ない。これは依存とは言わない。オピオドでも当然同じことが起こる。依存の診断基準を明確に定めることが困難である。

 一度オピオイドを使用しても必ず別の薬を使用して鎮痛をはかり、オピオイドを中止する努力を常に行うべきである。「様子を見ましょう。」といって他の薬を変更しない治療は不適切である。

 私は線維筋痛症患者の1割弱に強オピオイドを使用している。2004年に広島県立身体障害者リハビリテーションセンターから廿日市記念病院に移った際、地理的問題で廿日市記念病院を受診できなかった1人のみはモルヒネを使用したまま他の医療機関を紹介せざるを得なかった。それ以外の人は全員中止出来たか、現在私が強オピオイドを使用している。現時点では依存は起きていないと私は考えている。

 日本ペインクリニック学会が非癌性疼痛に対するオピオイドの使用ガイドラインを作成した。私はこれには大反対である。モルヒネは1日120mg以下あるいは200mg 以下の使用にすべきであるという医師によってのみ作成されている。選定委員の中に線維筋痛症を専門にする医師が入っているのであろうか。選定委員全員が心因性疼痛単独が存在すると信じている。また英語の日本語訳があまりに恣意的になっている。詳細は後日述べたい。

by fibromyalgia11 | 2012-10-06 13:11 | FMの薬物治療各論
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世界標準の線維筋痛症を専門家が説明します


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